英国のガーデニング事情 2

英国のフラワーショーに見る
イングリッシュガーデンの変遷と
ガーデンセンターの現状、気になる植物達
(有)長 良 園 芸
安 藤 正 彦
○イングリッシュガーデンは今・・・
私は36年前(1972年)7年間勤めた種苗会社を辞め、ガーデンセンターを開業しようとまずは憧れの本場英国へ視察旅行に出かけた。時期は5月上旬、そして始めてのチェルシーフラワーショーは会員であった為、初日に見る事ができ、心は張り裂けんばかりの感動であった。植物の展示は全てテントの中。直射光は遮られているものの展示されているものはよく見え、フラッシュなしで写真もよく撮れた。展示されている植物は殆どがひな壇形式。最も印象的でったのが花径30cmもある球根ベゴニアを筆頭にガーベラ、ダイアンサス、クレマチス、バラ、プリムラ、アルペンプランツ、盆栽、等などであった。また果物や野菜などを使ったデスプレーには驚いた。勿論色々珍しい植物がある中、それまで種苗会社にいて新しい鉢花に使える植物を探していた私の目にとまった花は「パチスタキス」。後に輸入する事となった。
そして10数年後のチェルシーフラワーショーはハンギング(吊り鉢)コーナーが出現し、長蛇の列で大変人気を博していた事に驚いた。庭に必要なオベリスクやフェンス、ポール、石や金製の置物などの展示コーナーが広くとられ見本庭園もあったが規模的には30~50㎡程度であったように思う。テント内は植物がメインでショウガーデンが多くなり、水辺や山林のような光景を色々な野草や宿根草、高山植物を使って演出されていた。展示植物は従来通りの球根ベゴニア、クレマチス、バラなどと共にデルフィニュームやジキタリス、ゲラニュームなど、またディアスシア、ネメシア等、多くの宿根性植物の展示も目立つようになった。
その後のチェルシーフラワーショーは屋外の見本庭園がメインになってきているように思う。それが大変な人気。展示される庭は庭と言うより丘や川、滝など自然の景観を表現する巨大なものから遊園地を思わせるような人工的でカラフルなもの、牧場の一角切り取ったような景色、落葉樹の下に山野草を群植した庭、フェンスに苔を貼り付けた庭、日本庭園、など変化に満ちている。テント内の植物はひな壇よりショーガーデンで植物を紹介するような展示になっている。そして植物の種類は5月のチェルシーより7月のハンプトンコートパレスフラワーショーやウイズレーガーデンの方で幅広い種類の植物や最新品種が見られるようになった。
今日、イングリッシュガーデンの辿り着いた所はますます「自然を感じる景観」であるように思える。最新の育種技術より作り出された植物であっても「自然が感じられるもの」でなくてはならない。そして庭の見せ所は野性味のある宿根草や球根植物が群生する姿である。ワイルドやペレニアルなどの言葉がよく目につく。ところがそれとは正反対にオレンジやブルーにペインテングされたオベリスクやフェンス、造形物などが庭に取り入れられるようになってきている事である。更に驚いた事に真っ赤な原色の1年草で立体的な花壇が出現し「モダン」が新たなテーマにもなってきている。吊り鉢やコンテナーに植えられる草花の種類が変化している。以前は日本では栽培困難であったアイビーゼラニュームがどこでもよく目についたが、今ではサフィニア系のペチュニアやカリブラコア等が多くなった。
○ガーデンセンターの現状
最初に訪れた36年前、スケジュールにはなかったがロンドン市内でガーデンセンターを探し見る事ができた。街中の為、規模は小さかった。店舗の中は薄暗く、肥料や農薬が主で植物はあまりなかった。目についたのはアルカリ土壌が多い為か土壌を酸性にするものや鉄分やアルミニュームなどの微量要素が商品になって売られているのに注目した。屋外に出ると屋根はなく、クレマチスが長い支柱が立てられた状態で多く販売されていた。それを見て、ガーデンセンターは色々な種類の植物、資材類を売りながらも何か一つの植物に特化した専門性をもたせる事が重要であると感じた。
その後、郊外のガーデンセンターを何カ所も見る事ができた。どこも規模は大きく、苗物売り場は光りを通す屋根が付き明るく全天候性になった。屋外展示場は宿根草、クレマチス、バラ、蔓性植物、果樹、樹木に分かれ展示され1年草類の展示は少なかった。店内はやはりどこも薄暗く、観葉植物を中心にセントポーレア、グズマニアなどが置かれていた。種子や球根のコーーナーは充実していた。そして10年位前からか、どこもレストランが併設されるようになった。そこでは朝から高齢者を中心に多くの人達が集い楽しい会話が弾んでいる。ガーデンセンターでお茶を飲み、ランチをとりながら時を過ごすのが英国人のライフスタイルになっているようである。
店内の売り場にはアウトドアーのレジャー用品から衣料まで「自然を感じる生活」をコンセプトに思い思いに展示してある。屋外には子供が遊べるコーナーや人の目を楽しませる為の巨大な農具を置いたり、面白い人形を置いたりしてエンターテイメント性も考えられているようになっている。
更に屋内も屋外も最も大切にされている事はコーナー、コーナーが1つの考え方、コンセプトに基づいて集められた商品群である事。植物であればカラーコーデネートされたり植生の似たものが集められ展示棚がつくられている。ガーデングッズ類も金属製の物、テラコッタ類も色で統一されている事。そして最近、何軒もガーデンセンター巡りをして感じる事は何処にでも同じ物が並ぶようになってきている事である。仕入ルートが均一化しオランダ経由のものや有名ブランド苗などが主流になり店の個性が以前に比べると失われつつある。ナーセリーを併設しているガーデンセンターは独自性を出す為、何かの植物栽培し特化すると言うよりもバックヤードになっている場合が多いようである。またチェエーン店で多店化しているガーデンセンターやホームセンターのガーデン部門も充実しており存続の為の戦いはどこも厳しいようである。しかし常時、幅広い種類と品種が品揃えされているはさすがと言わざるをえない。それは園芸に詳しい多くの消費者層に支えられている為である。今後、日本でもガーデンセンターは季節ごと特化した植物を展示し掘り下げた品種の追求と消費者に詳しい情報が提供できるようにならなくてはならない。
○販売されている植物の種類とその変遷
クレマチスやバラは不動の人気、どこも多くの品種が並べられているが、品種が変わってきている。クレマチスは新品種もあるが原種系の割合が増えている。バラはデビッドオースチンバラに代表されるオールドローズやガーデンバラとして人気のアイスバーグやアンジエラが目立つ。そして小輪の修景バラなど。また以前は高山性の植物のコーナーがよく目に付き珍しい植物を興味深く見た覚えがあるが、目新しい種類はなく縮小気味である。人気は宿根草類。エチナセア、ディエラマ、シシリンチューム、ブルンネラ、リグラリア、リクニス、セージ類、アスチルベ、ペルシカリア、等など色々。これらは3~4号のポットもあるが8~10号位の大株が揃えられている。また球根類はマイナーなネクタロスコルダム、シラー、アリウム、などが増えている。日本ではやっかいものの蔓性植物の品揃えが充実している。樹木類ではどこでも広いスペースをとり樹高3~4mのものまで巨大なポット入れられ展示されている。中でも日本のカエデが目につく。その他、最近、日本原産の植物がよく目につくようになった。筆頭はギボウシ、その他、シュロ、バショウ、ニシキシダ類、実の成るアオキ、ヤツデ、等などである。そして日本でもお馴染みの各社が販売するパテント付きブランド苗である。ネメシア、ディアスシア、カリブラコア、ペチュニア、ベゴニア、ペラルゴニューム等など。
○新たな庭づくりに求める事
何と言っても多様な宿根草を使ったペレニアルガーデンである。ボーダーガーデンや落葉樹の下草として植えるのが良い。一般に山野草として鉢植えで扱っていた植物を地植えにして群植させて見せるのも良い。
背景が重要、それは樹木の役割。自然樹型を生かし伸び伸びと育てたい。横枝は切っても主軸になる茎は切らない。そして大きくなれば下枝は切り取り、耐陰性のある下草や低木類を植える。更に背丈の高い樹木類もカラーコーデネートしたい。同じ緑色でも樹種により異なる。それにライム色や銅葉種を入り混ぜ、遠目に見て重なり合うような変化のある庭にしたい。
また、庭の中に庭があると言う考え方。庭はコンセプト。大きくても小さくてもコンセプトがあって出来上がる。ドライ、ウエット、シエード、トロピック、ウインター、等など何でもテーマになる。一つの庭を区分して色々な違った雰囲気を楽しむ。
今尚、一般に多くの花壇は草丈の低いコンパクト1年草が使われる。平面的で「絨毯を敷き詰めたような・・」と表現される。もっと高低差をつけて欲しい。背丈の高くなるヒモゲイトウ、ヒマ、宿根パンヤ、カンナ、クレオメ、など色々ある。これらを織り交ぜた花壇である。また平面的な花壇でも品種の違った色の集団ではなく、種類の違った植物を混植させ遠目に見て、オリジナルな色を出す方法である。これには葉物も織り交ぜる。例えば、ミントリーフやイレシネ等の葉物にベゴニア・センパ、インパチエンス、ラベンダー、バーベナ等などを混植するというもの。
更にはナチュラルばかりでは癒し系で元気が出ない。華やかな色彩や形の面白い造形物を庭に置く。塀や壁を好きな色でペインティングしてみると庭が生まれ変わる。
Posted by nagara at nagara : 09:34